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日本山岳遺産ニュース

全国3カ所を2021年度の日本山岳遺産として決定

日本山岳遺産基金は、2021年度の「日本山岳遺産」を決定し、以下の通り発表します。

アドバイザリーボードの助言のもと、事務局にて検討した結果、本年度は以下の3カ所を認定しました。各認定団体には、本年度中に助成金を拠出するとともに、山と溪谷社の媒体を活用した広報支援を行う予定です。

山名・地名 都道府県 認定団体 主たる活動
竜ヶ岳 三重県 竜ヶ岳自然環境保全推進委員会
竜ヶ岳登山道整備の会
環境保全を前提とした登山道整備
京都北山 芦生の森 京都府 一般社団法人 芦生もりびと協会 森林整備と生態系維持に関する啓発活動
鉾岳 宮崎県 フォレスト・マントル上鹿川 森林保全やその自然を活用した地域活性化の活動


2021年度の日本山岳遺産認定地と認定団体

 

竜ヶ岳(三重県)/竜ヶ岳自然環境保全推進委員会、竜ヶ岳登山道整備の会

【山の概要】
鈴鹿国定公園に指定される鈴鹿山脈の中ほどにある。標高1099.6mの低山ながら900mあたりで森林限界となる。麓の宇賀渓には奥深い谷が形成され、多様な自然環境を有している。山頂付近はササとシロヤシオの樹木のみの開放的な景観だが、登山道周辺には絶滅危惧種Ⅱ類の植生もある。宇賀渓にはかつて行商人が滋賀県と往来する宿場が形成され、また山麓は炭焼きで生計を立ててきた歴史をもつ。「鈴鹿セブンマウンテン」の一山。

【認定団体】
2011年から竜ヶ岳の安全登山を目指す登山道整備活動をボランティアメンバーで開始。2017年に竜ヶ岳登山道整備の会を発足、さらに、2021年には同会会員で竜ヶ岳自然環境保全推進委員会を立ち上げ、後年まで竜ヶ岳の特異な自然環境を守り維持していくことを念頭に、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、環境への影響を最小限に抑えながら登山道の崩壊箇所の補修や改修、崩壊の進行を遅らせる未然防止策を実施している。

【認定理由】
美しい自然が残る山で、登山道整備による環境保全活動を長年続けてきた実績を評価。

 

京都北山 芦生の森(京都府)/一般社団法人 芦生もりびと協会

【山の概要】
全面積(約4,200ha)の約半分は人の手が加えられていない天然林。標高600m付近まではコナラや常緑広葉樹であるウラジロガシ、ソヨゴなどの暖温帯林構成種が見られる。それ以上の標高ではブナ、ミズナラを主体とした冷温帯林構成種が生育する。気候区分としては、日本海型と太平洋型の移行帯に位置することから非常に豊かな生態系が形成されている。木本類243種、草本類532種、シダ類85種が確認されている。

【認定団体】
2017年1月設立。芦生の森の豊かな自然を守り生かす活動を行い、その周辺地域に住む人々が自然と共生し、持続的かつ循環的な自然環境及び社会環境を実現することに寄与することを活動の目的としている。その目的のためガイドツアー窓口の一本化、ガイド登録・養成、地域内の小中学校や地域住民に向けた芦生の森に関する啓発活動、保全に関する活動を行っている。

【認定理由】
芦生の森の啓発活動を行うなど、次世代に豊かな自然を受け継ぐためのさまざまな活動を評価。

 

鉾岳(宮崎県)/フォレスト・マントル上鹿川

【山の概要】
鉾岳(1277m)は、宮崎県北部に位置する上鹿川を取り巻く大崩山系に属する。急峻な地形で温暖帯から冷温帯までが垂直的に存在し、険しい山間を蛇行するV字谷には瀑布、甌穴などが展開する。変化に富んだ渓谷が、花崗岩の岩肌や自然林と調和し美しい景観を作り出す。急峻な地形ゆえに森林施業などの生産活動の場となり難く、結果として、原生的な自然林がまとまって生育している数少ない地域のひとつとなっている。

【認定団体】
2013年、地域団体「延岡チェンソーアートレンジャー部隊」を母体とし、森林・山村多面的機能発揮対策交付金の活用団体として設立。2019年、一般ボランティア団体として事業を継続し、宮崎北部森林管理署との「多様な活動の森」協定を更新。林木遺伝資源保存林への防鹿ネットの設置や新たな天然杉の発掘、そのルートの整備などを実施する。更に、エリア内の自然観察会などのイベントを開催し、自然を活用した地域活性化にも貢献している。

【認定理由】
ボランティア団体として事業を継続し、登山道の整備やエリア内の自然観察会などのイベントを実施している点を評価。

 

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