日本山岳遺産ニュース
日本山岳遺産基金は、2019年度の「日本山岳遺産」を決定し、以下の通り発表します。
アドバイザリーボードの助言のもと、事務局にて検討した結果、本年度は以下の5カ所を認定しました。各認定団体には、本年度中に助成金を拠出するとともに、山と溪谷社の媒体を活用した広報支援を行う予定です。
山名・地名 | 都道府県 | 認定団体 | 主たる活動 |
高田大岳 | 青森県 | 十和田山岳振興協議会 | 登山道整備 |
大笠山 | 富山県 | 五箇山自然文化研究会 | 登山道整備 |
伊吹山 | 滋賀県・岐阜県 | 伊吹山を守る自然再生協議会 | 植生保護柵の修繕 |
比叡山・比良山地 | 滋賀県・京都府 | 比良比叡トレイル協議会 | 安全登山のための道標設置 |
脊振山系 | 福岡県・佐賀県 | 脊振の自然を愛する会 | レスキューポイントの設置 |
【山の概要】
八甲田山系は、八甲田大岳を主峰として南北2群の火山をそれぞれ中心に、17の火口丘群で形成されている。その中で高田大岳の山容は美しい円錐形で、特に目を引く峻嶺である。
【認定団体】
全国的に悪路で有名であった十和田市の谷地温泉登山口から髙田大岳などの登山道を、安心して楽しく登れるように整備し、多くの登山者、観光客の来訪と、地域の活性化を目指して2014年12月設立。
【認定理由】
該当の登山道は継続的な整備が必要。地域振興と自然保護の両立が成されている点を評価。
【山の概要】
大笠山は両白山地の主稜線の北部に位置し、白山国立公園内にある。遠景からは編笠状でなだらかな山容をしているが、桂湖登山口からフカバラ尾根を通る登山道は標高差が1200mあり、長く急峻である。尾根上には火成岩や凝灰岩が多く、天然の檜や五葉松が自生し、登山道の途中には幹の空洞に人が入れるほどの大木がある。
【認定団体】
五箇山の自然・受け継がれてきた生活の知恵・文化遺産についての認識を深め広め、その継承に努めることを目的として1993年設立。五箇山の解説活動、体験活動や、登山道・峠道の整備(大笠山、猿ヶ山〜袴腰山、桂湖周辺、高坪山、人形山、金剛堂山など)などを行う。
【認定理由】
登山道整備等の環境保全活動に加えて、伝統文化の体験行事を継続して行なっている点を評価。
【山の概要】
伊吹山は起伏山塊で、典型的な石灰岩地帯に属し、山頂にはカレンフェルト地形(石灰岩の墓石様地形)や巨大な石灰露岩が見られる。南斜面は急崖となっており、山脚部には扇状地を形成し、弥高、上平寺等の集落が形成されている。
【認定団体】
2008年3月設立。お花畑維持管理事業、登山道維持管理事業、公衆便所維持管理事業、パトロール・啓発活動など、伊吹山の環境および景観を保全、再生するために必要な活動を行っている。
【認定理由】
10年以上継続して活動している点を評価。地元行政が主導し、多様な事業の実行力などにも期待。
【山の概要】
1000mを超える比良山地の山々からは琵琶湖のみならず、伊吹山から鈴鹿山脈、遠く白山連峰や木曽御嶽山が見える。山地の地形は湿地や池、滝など変化に富み、ミズナラ、コナラやブナなど多様な樹木と四季折々の花が美しい。
【認定団体】
全国に広がるロングトレイル(NPO法人日本ロングトレイル協会)の活動趣旨に賛同し、2016年8月11日に活動を開始。2016年9月から2017年8月まで、トレイルの予定ルートの調査を開始。2018年の台風による倒木の登山道整備が完了した。
【認定理由】
いくつかの関係団体が連携して実質的な活動をしている点を評価。道標設置による効果も期待。
【山の概要】
多くのブナ林や広葉樹があり、福岡・佐賀両県の重要な水資源地となっている。福岡市街からほど近く、春夏は多くの山野草に彩られ、冬期は樹氷や積雪による雪山体験ができる。野河内渓谷は家族連れなどで賑わう景勝地。
【認定団体】
2008年に福岡市早良区役所と西南学院大学WV部OB・OGが行った道標設置活動を継承し、2012年6月に設立。福岡・佐賀県境にある脊振山系の道標整備や登山道整備、自然保護活動を実施。また、福岡市早良区役所と協力し、山開き、清掃登山を通じて環境活動を行っている。
【認定理由】
地元の行政機関などと連携し、継続的に活動している点を評価。
■2020年2月には日本山岳遺産サミットを開催
当基金の活動を報告し、今年度の認定団体を表彰する「日本山岳遺産サミット」を2020年2月15日(土)に、東京・千代田区の一橋講堂中会議室にて開催予定。認定団体による受賞講演のほか、北海道大学の愛甲哲也先生による特別講演も行われます。
詳細は当基金のウェブサイト、ニュースリリース等で発表します。