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日本山岳遺産ニュース

2018年度の日本山岳遺産認定地として全国4カ所を認定

日本山岳遺産基金では、2018年度の「日本山岳遺産認定地」4カ所を決定しました。

本年度は12の団体からの申請があり、アドバイザリーボードの助言のもと、一般社団法人大雪山・山守隊(北海道・黒岳[大雪山])、新得山岳会(北海道・トムラウシ山)、特定非営利活動法人飯豊朝日を愛する会(山形県・飯豊山)、機動パトロール隊(栃木県・岩山[鹿沼市])を本年度の「日本山岳遺産」として認定しました。

各認定団体には、本年度中に来年度の活動に対しての助成金を拠出します。

併せて、月刊誌『山と溪谷』ほか山と溪谷社の媒体を活用し広報支援を行う予定です。

山名・地名 都道府県 申請・認定団体 主たる活動
黒岳[大雪山] 北海道 一般社団法人大雪山・山守隊 登山道整備
トムラウシ山 北海道 新得山岳会 山岳環境保全
飯豊山 山形県 特定非営利活動法人飯豊朝日を愛する会 登山道整備
岩山[鹿沼市] 栃木県 機動パトロール隊 安全登山啓発


2018年度の日本山岳遺産認定地と認定団体

 

黒岳[大雪山](北海道)/一般社団法人 大雪山・山守隊

【山の概要】
大雪山国立公園は2268平方キロに及ぶ日本最大の国立公園。その北東に位置する黒岳(1984m)は、火山性の大雪山のなかでも珍しく頂上付近まで緑が濃く、豊かな自然を有する。起点となる層雲峡からはロープウェイがあり、七合目まで手軽に登ることができるため入山者も多い。

【認定団体】
2011年、有志によるプロジェクトとして活動開始。2018年3月、任意団体から一般社団法人に改組。登山道整備活動「たまには山に恩返し」を定期的に行う。浸食の進んだ荒廃登山道とその周辺の生態系に対し、できるだけ景観を変えないよう配慮した「近自然工法」による登山道整備を実践している。

【認定理由】
営業小屋のない山域で、持続可能な登山道維持活動を模索・継続している点、行政や研究機関と協働し、一般のボランティアも巻き込みながら活動を広げていこうとしている点を評価。

 

トムラウシ山(北海道)/新得山岳会

【山の概要】
大雪山国立公園のほぼ中央に立つ標高2141mの山。「大雪の奥座敷」とも呼ばれ、日本百名山に選定されている。独立峰のような風格が漂う雄大な山容を持つ。頂上付近には、高山植物のお花畑や湖沼などの大自然が残り、訪れる登山者を楽しませている。

【認定団体】
1951年結成、2011年に60周年を迎えた山岳会。佐幌岳山頂にある佐幌岳避難小屋、南沼野営指定地の携帯トイレブースを管理する。野営指定地外に広がるトイレ道の植生復元活動や、携帯トイレ利用状況調査などを行っている。

【認定理由】
深刻化する山のトイレ問題への解決に向けた、携帯トイレブースの増設には必要性が感じられる。また、長年地域に根ざして活動している点を評価した。

 

飯豊山(山形県、新潟県、福島県)/特定非営利活動法人飯豊朝日を愛する会

【山の概要】
飯豊山(2105m)を擁する飯豊連峰は、大日岳(2128m)、御西岳(2013m)などが十数キロに渡って連なる。磐梯朝日国立公園内に位置し、主稜線は特別保護地区に指定されるとともに、森林生態系保全地域とされている。日本海からわずか50kmしか離れておらず、有数の豪雪地帯ともなっている。飯豊山の開山は白雉3(652)年とされ、古くから山岳信仰の山としても知られる。

【認定団体】
2007年の設立以来、山形県小国町に事務所を置き、飯豊・朝日連峰において、安全登山の推進(避難小屋や山小屋の維持管理)、植生の復元(裸地化した登山道の被覆や植生調査)、遭難対策活動(登山技術講習会)などを行う。

【認定理由】
過去10年間の保全活動を評価。ボランティア(登山者)を募って保全作業をすることは、山岳環境保全の意識醸成に効果が大きいと考える。

 

岩山[鹿沼市](栃木県)/機動パトロール隊

【山の概要】
鹿沼市街地の西側に位置し、市民のハイキングコースとしてよく知られる低山(328m・一番岩)。豊富な自然環境が保たれ、イノシシやシカなどが生息する。古くから岩登りの初心者向けの練習場や安全登山講習に利用されてきた。岩質が凝灰岩のため降雨後などは滑りやすく、コース中には鎖やハシゴを利用する場所があり、毎年平均2~3件の滑落事故や遭難事故が発生している。

【認定団体】
2008年設立。鹿沼市を中心に登山事故防止や安全啓発活動を行う。主な活動として、自治体と連携した山間部でのレスキュー活動、定期巡回による事故防止活動、地域の小中校生に向けた自然体験学習などを実施。2013年には栃木県知事から感謝状、2016年には鹿沼警察署長より感謝状を授与されている。

【認定理由】
実際に事故が多発しているエリアなので、早急な対策が求められる。登山届提出箱の設置や安全登山啓発ガイドブックの作成などは、安全登山啓発活動に対する具体性がある。小中学生を対象とした安全登山講習は、次世代登山者の育成にもつながる点を評価。

 

これらの団体の活動詳細については、2019年2月に行う「日本山岳遺産サミット」で紹介していただく予定です。

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