事務局からのお知らせ
東日本大震災の影響は、人命の損失や自宅の被災といった直接的な被害から、地域経済の崩壊による失業や被災者の心の問題までさまざまです。
そのようななかで、被災地の高等学校の山岳部・ワンダーフォーゲル部は新入部員を迎え、新しい1年をスタートさせています。当然ですが、彼らにも震災の影響が大きくのしかかっています。
山と溪谷社は、これまで財団法人全国高等学校体育連盟を通じて全国の高校山岳部・ワンダーフォーゲル部に月刊『山と溪谷』を寄贈してきました(2011年度は全20校)。そのなかで、大きな被害を受けた宮城県石巻市の石巻高等学校が、被災後にこのキャンペーンに応募され、それがきっかけで同部の顧問手島一晃先生と連絡を取り合ってきました。
手島先生によると、4月になって、ようやく部員たちの事情が把握できるようになった段階では、数人の自宅が大きく被災したことで個人装備の手配が必要となった程度でした。しかし、入学式が4月21日に行われ、新入生を迎えた段階で事情が変わりました。なんと入部希望が11人、2年生からの転部を含めると計12人の部員増となったのです。
昨年までの総部員数9人からの大幅の増加です。多くは震災後の避難生活体験から「野外生活技術」としての登山を学びたいと考えたようです。電気がなくても米が炊け、野外と同じような避難所生活にも動じない経験と技術を欲したのです。
そうなると共同装備が問題となりました。このような現状では、学校の予算はきびしいため、「装備を何とかできないだろうか」と手島先生から弊社に相談があったのです。
その相談を受けて、山と溪谷社とわたしたちが昨年設立した日本山岳遺産基金では、震災復興支援と「次世代育成」という観点で、彼らの装備を支援することを決定しました。
また、手島先生を通じて宮城県高体連の登山専門部に問い合わせたところ、ほかにも被災した高校があることがわかりました。それぞれの学校に確認したところ、多賀城市の多賀城高等学校山岳部も同様に個人装備の手配に苦慮されているとのことでした。そのため、石巻高等学校と同時に彼らの装備も募集することにしました。
高校に入学したばかりの15歳の少年たちが山に望んだことは、「生き抜く技術」としての山だったかもしれません。でも、必ずや山そのものの魅力に目を見開き、そのことが「生きる力」につながるのだと信じています。そして、それが東北復興の大きな力になるはずです。
全国の登山関係者にお願いをします。彼らの登山装備を提供しようではないですか。それは単なる山道具ではありません。少年少女たちの将来と、東北の未来をも支える魔法の道具になるはずです。ご協力をよろしくお願いします。
2011年6月9日
日本山岳遺産基金事務局長
久保田賢次
応募受付は終了しました。ご支援ありがとうございました。
経過については、当サイトおよび『山と溪谷』誌面等で順次ご報告いたします。