日本山岳遺産ニュース

「日本山岳遺産」認定地発表

 2010年11月3日、山梨県甲府市で第1回日本山岳遺産サミットを開催し、日本山岳遺産の認定地と認定団体を発表しました。  第1回となる本年の認定地と認定団体は以下の通りです。各団体への助成金の総額は300万円で、本年度末までに各団体と調整の上、月刊『山と溪谷』、日本山岳遺産基金ウェブサイト上で発表致します。

2010年度日本山岳遺産認定地・認定団体

認定地 所在地 認定団体
櫛形山 山梨県南アルプス市 櫛形山ネットワーク
小金沢シオジの森 山梨県大月市 シオジ森の学校
乙女高原 山梨県山梨市 乙女高原ファンクラブ
石鎚山 愛媛県久万高原町 久万高原町役場
※ 山梨県下の3ヶ所については、モデル事業として、山梨県、山梨県山岳連盟などとの事前調整の上、
各団体からの申請を受けて決定した。


▲認定団体のメンバーと当基金会長の関本と副会長の川崎(中央左)

各地の詳細

2010年度 日本山岳遺産認定地 位置図


001櫛形山(山梨県南アルプス市)


▲早春の櫛形山




▲アヤメが咲き始めたアヤメ平のシカ食害防止ネット内

■申請団体:

櫛形山ネットワーク

■概要:

標高2052mの櫛形山は、植物では約810種、蝶類は60種類、哺乳類は44種類と、県内で確認されている野生動植物種のほとんどが生息し、特産種、山梨県レッドデータブックの指定種も他地域に比べ多数生息。なかでもアヤメ群落は山梨県自然記念物に指定されている。
また、この山は、かつては森林育成、炭焼き、氷の製造などのために利用されていた。現在は、シカの食害によりアヤメ群落は消失し、アツモリソウやキバナアツモリソウなど希少な高山植物は盗掘などにより、ほぼ絶滅に近い状況である。

■団体:

任意団体。櫛形山ネットワークは、これまで櫛形山の環境保全活動に関わってきた「櫛形山を愛する会」「NPO法人芦安ファンクラブ」などが集まったネットワーク組織。

■活動計画:

櫛形山と言えば「アヤメ」だとイメージしがちだが、実は様々な動植物が生息し、豊かな自然環境が残されており、それらが絶妙にからみあってアヤメも自生しているという自然界の連鎖やしくみをほとんどの人が知らない。そのような生態系を後世に引き継ぐために櫛形山を再評価し、多くの魅力を伝え、地域と一緒になって守る機運を高める。そのため、一般向けの冊子を作成し、シンポジウムを開催する。

■評価:

市街から距離的には近いにもかかわらず、高い生物多様性をもつ点。また、近年のシカ食害とアヤメ群落の保護というところから、山全体の保全に視野が移り、そのことをシンポジウムや冊子を通じて地域住民に伝える計画を評価。

 

002小金沢シオジの森(山梨県大月市)


▲シオジが優占する豊かな水源の森




▲地域の親子が参加者の中心

■申請団体:

シオジ森の学校

■概要:

「小金沢シオジの森」は、山梨百名山で、500円札の風景の撮影地としても著名な雁ヶ腹摺山(1874m)の山麓に広がる森。大月市の北側に位置し、相模川水系葛野川の源流部に広がる県有林。約500haの森は、カラマツが植えられている人工林と、モミ・ツガ、サワグルミ・シオジなどを主とする天然林が広がる。特に沢沿いに群生する見事なシオジの大木は樹齢およそ140年を数え、県内ではめずらしく、貴重なことから学術参考林に指定されている。
また、この周辺は木材産地の場としての歴史も古く、宝暦5年(1755年)に日光御用材、両國橋の修築用木材の伐出が奈良子山(現大月市七保町)でおこなわれ、遠く江戸まで運ばれたとの記録が残っている。山梨県の「森林文化の森」、林野庁の「水源の森100選」などに選定されている。

■団体:

任意団体。シオジ森の学校は、2006年に「森に遊び、森に学び、森を育てよう」との目標を掲げ設立。小金沢シオジの森をメインフィールドに、とくに周辺地域の小学生を対象に、トレッキング、植林や間伐などの林業体験、クラフトやキャンピングなど、さまざまな森林環境教育活動を展開。
スタッフには、林業従事者や教育関係者のほか、森林インストラクター、家具作家や画家を含め、さまざまな分野の人が参加している。
http://www.seijitsudo.com/sioji/

■活動計画:

スタッフのレベルアップや組織の継続性を高めるとともに、一般参加者にこの森をより理解しやすくするために、シオジの森の「動植物カレンダー」「観察ポイントマップ」「ガイド用マニュアル」を作成。そのために外部有識者を招いて調査を行う。

■評価:

水源の森というきわめて重要な地域で、地域の多様な人材によって、子どもたちの環境教育を継続してきたことを評価し、活動の継続性と深化させる計画を支援。

 

003乙女高原(山梨県山梨市)


▲長く草原が維持されることでできた亜高山帯草原




▲ボランティアで草刈りをすることが維持活動の基本

■申請団体:

乙女高原ファンクラブ

■概要:

「乙女高原」は、山梨県山梨市の標高1700mに広がる約6ヘクタールの草原と、周辺のブナ林、ミズナラ林、ダケカンバ林、シラカバ林、カラマツ人工林など多様な森林、湿地などがモザイク状に分布しているエリア。草原は、戦前までは麓集落の共有草刈り場で、秋の終わりに地元民が総出で草刈りをしていた。
戦後は山梨県で初めてのスキー場としてオープンし、スキー場の管理作業として草刈り作業が継続された。このように、目的は変わっても連綿と続けられてきた草刈りが草原を保全する作用を及ぼし、森林への遷移を止め、亜高山帯特有の多様な草本植物が維持されている。
小楢山(1713m)を含むエリアが山梨県の森林文化の森「乙女高原の森」に指定されている。

■団体:

任意団体。乙女高原ファンクラブは、乙女高原の自然を次の世代に確実に譲り渡すために、その自然と、人と自然との関わりを育むことを目的として2001年に設立。地域の市民やNGO、NPO、行政(山梨県、山梨市)、企業・学校など協力し、パートナーシップの精神でこの目的に向かって活動を進めていくための母体および連絡調整機関として機能。①調査活動、②保全活動、③環境教育、④情報発信の4つのテーマで活動。
http://fruits.jp/~otomefc/

■活動計画:

ボランティアによる草原維持活動と当該エリアでの自然調査・環境教育の推進など。

■評価:

生物多様性の観点で、日本各地で減少が指摘されている「草原」の維持に関わる活動を、地域を超えたネットワークで推進。各種活動のバランスや独自のガイド認定など、先進の取り組みも評価。とくに当該エリアはスキー場跡地という、日本の山岳エリアの今後を考えるうえで、ひとつの事例となりえる活動を評価。

 

004石鎚山(愛媛県久万高原町)


▲長い信仰の歴史をもつ石鎚山




▲近年、同地域では自然解説員の需要が伸びている

■申請団体:

久万高原町役場

■概要:

自治体。石鎚山(1982m)は四国山脈の最高峰で、面河渓を含む愛媛、高知両県にまたがるエリアが石鎚国定公園に指定されている。山麓の温暖帯林からシコクシラベの優占する亜寒帯林までの森林の垂直分布、西日本有数の規模を誇るブナの原生林など、貴重な自然が随所に残されている。
石鎚山の南斜面にあたる面河渓は、渓流沿いにカエデやツツジ類、トチノキなどの広葉樹に、モミやツガなどの針葉樹が混交する。石鎚山系は西日本にありながら、高標高地には北方系の種が多数生息する点が特徴で、高い生物多様性をもつ場所である。また、石鎚信仰の歴史は古く、役の行者「役小角」が1300年余の昔に開山したことに始まるとされている。

■団体:

自治体。久万高原町は、平成16年に1町3村(久万町・面河村・美川村・柳谷村)が合併して発足。標高1000mを超える四国山地に囲まれ、総面積は約584㎢と県内一の広さを誇る、人口約1万人余の高原の町。同町にある面河山岳博物館は平成3年に開館した面河・石鎚の自然や歴史を知ることができる博物館。この博物館は、石鎚山全体の自然を通じて生きた教科書から学びの場づくりを展開している。http://www.kumakogen.jp/

■活動計画:

面河山岳博物館は、石鎚山系とその周辺の自然と人文を網羅するフィールドミュージアム構想を提唱。コミュニティ・キュレータを養成し、国定公園内における地域資源の再発見と自然の物語の発掘、山岳全体の自然を通じて生きた教科書から学びの場づくり(「歩く・見る・聞く・発見する」フィールドワーク)を展開している。

■評価:

地域の自然・歴史資源を有効に活用し、環境保全と、安全登山を両立するために、地域の人たちのネットワーク化と教育により、町という行政だけではなく地域として推進しようとする計画を評価。