日本山岳遺産ニュース

第3回 日本山岳遺産サミットを開催し、2012年度の日本山岳遺産認定地および認定団体を発表しました


▲特別講演で登壇した野口 健氏

 2012年11月15日、東京・恵比寿の恵比寿ガーデンルームにて、「第3回 日本山岳遺産サミット」を開催し、本年度の日本山岳遺産の認定地と支援団体を発表しました。
 サミットの第1部では、当基金の2012年度の活動報告を行い、本年度の認定地全3箇所および支援団体を発表し、各支援団体の代表の方から活動内容をお話しいただきました。
 続く第2部では、当基金のアドバイザーリーボードであり、アルピニストの野口健さんが「富士山から日本を変える」と題した特別講演を行いました。
 当日の参加者は250名。各認定地からの報告や野口さんの講演を熱心に聞き、日本の山々の未来について考える貴重な時間を共有することができました。

 本年の日本山岳遺産認定地と支援団体は以下の通りです。

2012年度日本山岳遺産認定地・支援団体

認定地 所在地 支援団体
夕張岳 北海道夕張市・南富良野町 ユウパリコザクラの会
七時雨山 岩手県八幡平市 七時雨ロマンの会
臥龍山 広島県北広島町 芸北自然保護レンジャー


▲左から、当基金副会長の川崎、アドバイザリーボード野口健さん、芸北自然保護レンジャー 川崎海山さん、ユウパリコザクラの会 秦野公彦さん、
七時雨ロマンの会 駒田一彦さん、アドバイザリーボード 田中文男さん、アドバイザリーボード 西本武志さん、当基金会長の関本

各地の詳細

夕張岳(北海道夕張市・南富良野町)


▲固有の高山植物が多い夕張岳

■支援団体:

ユウパリコザクラの会

■山の概要:

 夕張岳(1668m)は、北海道夕張市と南富良野町に位置し、蛇紋岩という特殊な岩でおおわれ、ユウパリコザクラやユウバリソウといったこの山に固有の高山植物が多数生育しています。そのため、国の天然記念物に指定され、田中澄江著『花の百名山』にも選ばれています。
 初夏から夏にかけての花のシーズンには、全国から多くの登山者が訪れます。

■団体:

 ユウパリコザクラの会は1989年、夕張岳に計画されたスキー場開発の反対運動を契機に設立されました。そして、運動のひとつの手法として、夕張岳を国の天然記念物にする活動を展開し、1996年に指定されました。その後、高山植物の盗掘が悪化し、その対策としてつくられた、北海道希少野生動植物保護条例の制定(2001)にも中心的な役割を果たしました。2002年からは、夕張岳で高山植物の盗掘防止パトロールを行っています。
 近年は、安全登山と高山植物保護の拠点として重要な夕張岳ヒュッテの再建や、エゾシカによる高山植物の食害防止にも取り組んでいます。

■認定理由:

 2014年に創立25周年を迎えるユウパリコザクラの会は、夕張岳の特徴ある豊かな自然と、抱えている問題を紹介する記念誌を発行し、夕張市の中高生と全道の市町村図書館などに無償配布します。この啓発の価値と、そもそも日本有数の高山植物の宝庫である夕張岳において、四半世紀にわたって、国の諸機関や地方自治体を巻き込んだ保護活動を展開してきた点を評価し、本年度の日本山岳遺産認定としました。

 

七時雨山(岩手県八幡平市)


▲双耳峰が美しい七時雨山

■支援団体:

七時雨ロマンの会

■山の概要:

 七時雨山(1063m)は岩手県北西部、八幡平市に位置しています。情緒ある山名で、その由来は一日に何度も天候が変わることによるとも言われています。山麓一帯は古くから牛馬の放牧に利用され、牧歌的な雰囲気とともに豊富な湧水群に囲まれた自然豊かな地域で、地元のみならず、首都圏からの熱烈なファンも多くいます。
 山野草や樹木の種類が豊富で、山頂からの眺めもすばらしく、春秋を問わず、訪れるハイカーが絶えません。双耳峰独特の美しい山容と「ななしぐれやま」という響きのよい山名が評価され、2007年に岩崎元郎選「新日本百名山」にも選ばれています。

■団体:

 七時雨ロマンの会は、地域で七時雨山の魅力を伝え、自然と歴史の調和した環境づくりを行っている団体です。七時雨山の北西麓には約千年前に切り開かれた鹿角街道がありますが、七時雨ロマンの会が毎年刈払いを行い、往事の姿を今にとどめています。この街道は古くは流霞道と呼ばれ、それが七時雨の山名の由来のひとつとも言われています。
 七時雨山は、古くからこの街道の象徴として存在してきたのです。このような地域で、登山道整備のほか、山と史跡に触れるツアー、地元の小学生を対象とした環境教育などを計画しています。

■認定理由:

 「山と歴史」という観点から、山の多面的な価値、人との関係を提示できる山であり、同会の活動が地域に根ざし、それを体現していることを評価し、今年度の日本山岳遺産認定としました。

 

臥龍山(広島県北広島町)


▲西中国山地でも豊かな森林が残る臥龍山周辺

■支援団体:

芸北自然保護レンジャー

■山の概要:

 広島・島根の県境に位置する西中国山地国定公園芸北地区は、ブナ林、湿原、草原などを有する中国山地でも有数の生物多様性の高い地域です。
 地区内の臥龍山(1223m)は、ブナ、ナラ、トチノキの原生林が残り、四季折々に、木や花、鳥、きのこなど、さまざまな自然を楽しむことができます。山容が龍が伏臥しているように見えることから、その名がつけられたと言われています。
 しかし、近年、周囲の森で「ナラ枯れ」が進行しています。ナラ枯れとは、ある種の昆虫が媒介するナラ菌により、ミズナラなどが集団で枯れてしまう現象で、本州の日本海側を中心に近年増加傾向にあります。シカの食害問題と並び、日本の森の大きな問題となっています。

■団体:

 芸北自然保護レンジャーは「自然を守ることは子ども達の未来を守ること」を理念に、ナラ枯れ対策をはじめとした自然環境保全活動、自然保護思想の啓発、環境教育に取り組んできた団体です。
 来年度は「ヤマネも熊も棲める森林づくり」として、春、夏2回、地元の小学生と都市部の子どもたち、合わせて40~50人ほどで「ナラ枯れ対策ボランティア」の開催などを計画しています。

■認定理由:

 西中国山地を代表するエリアで、全国に広まりつつあるナラ枯れへの対処を、ボランティアベースで活動している数少ない団体で、その活動を地域の子どもたちへの環境教育に活用している点を評価し、今年度の日本山岳遺産認定としました。